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2013/05/26
■バックロードホーンの設計について
以前はきちんと計算して設計してましたが、慣れてくると適当になってきます(笑)
公式どおりに設計しても上手くいかないことも多かったりするので、程々に設計して取り合えず作ってみましょう。

ということで、masamasa式の超いい加減な設計法を紹介します。
設計に必要なデータはスピーカーユニットのサイズ(取り付け穴径、奥行き等)と実効振動板半径a(cm)だけなので、音響理論が苦手な人でも未知のスピーカーユニットでも対応可能です(爆)


■失敗しない(かもしれない)簡単バックロード設計法
〜〜〜直管6本1.4倍式お手軽ホーン設計〜〜〜
 (直管5本なら1.5倍前後、7本なら1.3倍前後が良いかもしれません)
連続する直管をなだらかなホーンに見立てて設計するので、細かいことは気にしないようにします。
直管6本繋ぎで、直管の断面積を1.4倍に増やしていく方法です。
(ケースバイケースで倍率を変更して対応します)


■実際に設計してみます〜設計の流れ〜

@ユニットの選定
バックロードホーンはオーバーダンピングタイプのユニット(基本的にバックロード専用)と相性が良いらしいですが、バスレフ向きでも密閉向きでも、各自好きなユニットを使ってもらってOKです。
今回は使ったことも見たこともない、、、
TangBand W3-881SJFで設計を進めていきます。
何故このユニットを選んだか?ですが、、、
TBのページを見てて、良さそうだと感じたから、、、それだけです(爆)

必要なSPユニットのデータは、、、
スピーカー本体のサイズと、、、
実効振動板半径(a)=3.19のみです。


A箱のサイズ、ホーン開口位置、内部構造の概要
使用板材は15mm厚ラワン合板。
完成サイズは幅200mm、高さ400mm、奥行き250mmを目標にします。
ここでは構造の簡単なD10バッキー(長岡鉄男氏設計)風の設計に(笑)
開口位置は前面で、直管6本の組み合わせです。で、簡単にスケッチして見ます。


B空気室容積、スロート断面積の決定
空気室容積=40π×(a×a)=1278=約1.28リットル
オリジナル計算式から求めますが、製作後調整できるように大きめの値になってます。
実際には、SPユニット分容積が減りますが、無視してOKです。
基本的に、駆動力の弱いユニットは「大きめ」、駆動力の強いユニットは「小さめ」が吉です。

スロート断面積=32(実効振動板面積)×0.7〜0.9(絞り率:適当でOK)くらいにしましょう。
今回は32×0.8=25.6(目標値)で設計を進めます。
尚、絞り率は経験的に0.7〜0.9くらいが失敗が少なくなると考えています。
駆動力の弱いユニットは「絞り率=小さめ」、駆動力の強いユニットは「絞り率=大き目」が吉です。

経験的に、、、
弱駆動力タイプ→空気室=大、絞り率=小
強駆動力タイプ→空気室=小、絞り率=大
の組み合わせが良い感じです。


C空気室、各直管の数値の決定
今回の箱は、構造上空気室奥行きを浅くしないとホーン長が短くなってしまいます。
ホーン長は経験上1m以上は欲しいと思っていますが、今回はギリギリっぽいのでホーン長最優先で設計します(笑)
ユニットの奥行きが53±0.5mmなので、ギリギリ入るサイズ15mm(バッフル板厚)+40(空気室奥行き)mmにします。
そこから計算すると空気室の高さは188mmになります。
これで空気室は決まり。

続いてホーン部の設計。
この箱は横幅固定で内寸170mmです。
スロート断面積目標値25.6÷17=1.506となるので、スロート高さ15mmとします。
実際のスロート断面積は25.5cm2、スロート絞り率は0.797になります。

ここからが1.4倍式設計です。
横幅は固定なので折り返しごとにホーン高さを1.4倍にしていきます。

第2管高さ=第1管(スロート)高さ×1.4=21mm
第3管高さ=21×1.4=29.4≒30
第4管高さ=30×1.4=42
第5管高さ=42×1.4=58.8≒59
第6管高さ=59×1.4=82.6≒83

となります。
各管の高さ、板厚から箱全体の高さを計算すると

15+21+30+42+59+83+(15×7)=355mm

目標値より45mm低くなってしまいました。
予定の400mmに近づけたければ、1.4倍より少し増やして再計算することになりますが、ここでは355mmでOKとします。
最終的な箱サイズは200W×355H×250Dとなります。

各寸法が決まったところで、CAD等で図面を書いておきます。
ユニット位置、SP端子位置は見た目重視でも使いやすさ重視でも良いでしょう。
設計図が出来たら、各パーツのサイズを拾い出して、板取り図を作ります。
今回は割愛。
この段階で設計は完了です。
が、板取りしてみて無駄が多かったり、寸法絡みで組み立てが難しい等不具合があった場合は修正することもあると思います。


D周波数特性のシミュレート
初めてバックロードを設計する方、設計経験が浅くノウハウも少ない方は、自分の設計が上手く行ってるかどうか自信が無いんじゃないかと思われます。
(ベテランさんでも作って音を聴くまでは不安かな?)
そんな時は、インターネット上にスピーカーのシミュレーションソフトがあるので、それを利用してみましょう。
『スピーカー設計プログラム〜アプレット版』というJavaAppletを使ったプログラムでバックロードホーンのシミュレートが出来ます。
実際の測定値とは微妙に一致しませんが、設計の参考になると思いますし、目で見れるので安心感がありますね。

(1)スピーカーユニットを選択すると各パラメーターが自動表示されます。

(2)キャビネット設定で「バックロードホーン」を選択、「ざっと設計」をクリックすると標準的?な数値が設定されます。この状態で「キャビネット特性表示」をクリックすると標準的?なグラフが表示されます。

(3)オリジナル設計の箱容積、ポート長(ホーン長)、開口半径r(スロート部)、開口半径r2(ホーン開口部)を手入力して「キャビネット特性表示」をクリックすると右側に周波数特性グラフが表示されます。

(4)標準設計のグラフとオリジナル設計のグラフを比べても面白そうです。各パラメーターを弄ってグラフの変化を見るのも参考になると思います。
作者さんに感謝しつつ、有効利用しましょう。


E【おまけ】ホーン長の求め方
細かいことを気にするとキリが無いので、こんな感じで大丈夫です(をぃ)

下図は180度と90度ターンが混在する場合


F最後に
細かいことを気にしなければ、結構簡単に設計できることが分かりましたでしょうか?
希望するサイズに収めるには、カット&トライが必要になりますが、慌てずマッタリと設計を楽しみましょう。
とにもかくにも、自分で設計したSPを一度作ってみましょう。
他の方の設計品を作ったのとは違う感動が味わえると思います。
想定外の音が出てくるかもしれませんが、それもまた面白いもんです(をぃ)

Challenge Original Speaker !!!



【2013/05/27追記】
■先に空気室容量を決められない場合の設計
下図はわたしが好んで使っている構造パターンです。
このパターンの場合は、ホーンのサイズが決まらないと空気室のサイズが決められません。
ホーン部を決めてから、スロート入り口部の寸法を調整して、空気室サイズを決めます。


■実際に設計してみます〜設計の流れ〜

@ユニット、箱サイズ
ユニットはTangBand W3-881SJF。
箱は背面開口バックロードホーンで目標サイズW.200、H.400、D.250。


A空気室の高さの決定
ユニットの取り付け寸法が76φ、フレーム最大外径が94φなので、空気室高さは最低でも80mmは欲しいです。
ここは余裕を見て90mmとします。


B各直管のサイズ計算
第1管(スロート)高さ=15mmとすると
第2管高さ=15×1.4=21mm
第3管高さ=21×1.4=29.4≒30
第4管高さ=30×1.4=42
第5管高さ=42×1.4=58.8≒59
第6管高さ=59×1.4=82.6≒83

上記数値から箱の奥行き計算すると298mmとなります。
ちょっと大きすぎるので係数を小さくして再計算します。

係数の最適値は不明ですので、とりあえず第2管を21mm⇒20mmとして係数を出してみます。
20÷15=1.333333・・・・・
となるので、とりあえず係数=1.33でホーンサイズを再計算します。

第1管(スロート)=15mm
第2管高さ=15×1.33=19.95≒20mm
第3管高さ=20×1.33=26.6≒27
第4管高さ=27×1.33=35.91≒36
第5管高さ=36×1.33=47.88≒48
第6管高さ=48×1.33=63.84≒64

これだと奥行きは264mmになります。チョイ大きいですが264mmに決定。


Cスロート入り口部サイズの決定
空気室容積=1.28リットル
空気室幅=170mm、空気室高さ=90mm、他からすロート入り口部の『X』を求めます。

1280-(17×9×6.2)=331.4

X=331.4÷17÷3=6.498

切れのいいとこで、X=6.5cm=65mmに決定。
実際の空気室容積=1280.1になります。

箱高さ400mmだとホーン全長は、、、
254+214+229+107+370+370=1544
になります。

このままで決定でも良いのですが、バッキー構造の箱と比較すると面白そうなので、H=355でホーン長を計算すると1319mmになります。

ホーン的には、この箱のほうが広がり方が小さく、ホーン長は長いことになります。
ほぼ同じサイズでも、設計によってホーン開口位置、ホーン形状、長さが違ってきます。

ってことで、この箱もシミュレートしてバッキー風の箱と比較してみましょう。


こんな感じになりますが、実際に聴いてみないとどちらが良いか分かりませんね。


【2014/02/16追記】
■ホーン長と低域再生限界の関係
必要とする最低域周波数の1/4波長のホーンがあればなんとか再生できます。
たとえば50Hzまで再生したい場合は、、、

340m(音速)÷50Hz(周波数)=6.8m(50Hzの波長)

6.8m×0.25(1/4波長)=1.7m

つまり、ホーン長が1.7mあれば50Hzの再生が期待できることになります。

ちなみに↑上のサンプルBHのホーン長は約1.3mなので、、、

低域限界は、、、

340÷1.3×0.25=約65Hzとなります。

■ホーン長とホーン開口面積とスロート面積の関係
ホーン長は短すぎても長すぎても宜しくない(経験的に、、、笑)ので、、、
1.2m〜2.6mくらいが無難だと思います。
低域限界は約71Hz(1.2m)から約33Hz(2.6m)となります。
このときの、開口面積とスロート面積の関係は、、、
1.2mで5倍前後、2.6mで8倍前後くらいを目標にしてください。
これらの数値は経験上のものなので、あまり拘る必要はありませんが、、、
上記範囲内で設計すれば、大きな失敗は少なくなると思います。


【参考資料】

簡単バックロード計算式(2013年版)

小学生でも分かる!?(かもしれない)バックロードホーン設計の『ツボ』

組み合わせ(コンビネーション)型スタガード・バックロードホーン図面集

ダンプダクト・バックロードホーン「設計のツボ」


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