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◆◇◆スタガード・バックロードホーンの「ツボ」◆◇◆
ちょっと難しい『クチから屁が出る-屁理屈理論-』


無限大の組み合わせで『楽しみ方も無限大』



■低音限界とホーン長


TQWT(Tapered Quarter Wave Tube、テーパー付き共鳴管)という「1/4λ理論のエンクロージャ方式」(λ=波長)がありますが、バックロードホーンも似たようなもので1/4λのホーン長があればλの周波数までの実用的再生が可能になります。

たとえば「50Hzの波長」は、

340(m/s)÷50(Hz)=6.8(m)

となりますが、1/4λ=6.8÷4=1.7mあれば50Hzが再生できることになります。

理論的にはホーンが長いほど低い音域まで再生できるわけですが、ホーンを長くすると箱も大きくなるし、ユニットの駆動力が足りないと制御がきかなくなります。
また、短すぎてもホーン効果が弱くなります。
経験上、70Hz(1/4λ=1.21m)から30Hz(1/4λ=2.83m)くらいまでが無難なようです。

ただ、5cmフルレンジに長いホーンを付けても元々出ていない低音を出すことは難しいです。
潜在能力以上のものを求めても『出ないものは出ない』ので、ユニットの身の丈にあったホーン長で使うのが良いでしょう。

たとえば、、、

5cmクラス ⇒ 1.0m〜1.8m
8cmクラス ⇒ 1.4m〜2.2m
10cmクラ ス⇒ 1.5m〜2.4m
12cmクラス ⇒ 1.6m〜2.6m

くらいを目安にすると良いかもしれません(笑)

■前面音と背面音の干渉

さて、実際には此のホーン自体が色々と悪戯をするわけです。

基本的に、スピーカーユニット単体の前面と背面から出た音は「全域で逆相」になります。
ところが、ユニット背面にホーンが付くとホーン長の影響で位相がずれて、ユニット前面と「同相になる周波数」と「逆相になる周波数」が出てきます。
そして、ユニット前面の音とホーン開口からの音が干渉、位相ズレの影響でピーク、ディップが出来ます。
つまり、それが原因で周波数特性が凸凹になったりするわけですね。

そこで、ホーン長やフレアレシオ(広がり率)を変えた特性の違う複数のホーンを使ってピーク、ディップを分散化させアバレを補正します。
上手く機能すると、スタガード効果でピーク、ディップの数が増え、音圧レベル差が縮小し特性がナダラカになります。

(↑クリックで拡大)

このように周波数によって位相ズレができ、ユニット正面と同相の帯域は加算、逆相の帯域は打ち消しあうので周波数特性が凸凹になります。
実際の使用ではホーン開口からも普通に音圧が出ていて、ホーン開口の位置、部屋の共振周波数、測定位置等によってもピーク、ディップの周波数が変わります。
バックロードの場合、特性図は凸凹だけど聴感ではフラットに聴こえたりするのは『位相ズレによる音楽鑑賞への悪影響は少ない』のかもしれません(想像だけで未検証です、、、笑)

■シングルホーンとデュアルホーンの『位相ズレ』
実際のバックロードホーンSPの使用では、実効ホーン長の分、位相がズレます。

実効ホーン長=(b+Hl+c)-a
・a=ユニットからマイクまでの距離
・b=ユニット背面からホーン入り口までの距離
・c=ホーン開口中心からマイクまでの距離

実効ホーン長が変われば、正相、逆相になる周波数も変化しますので、周波数特性のピーク、ディップの位置も変わることになります。
マイクの位置、ホーン開口部の位置(前or後or下or横)でも位相特性は違ってきます。
通常のオーディオ環境では「壁の反射」「定在波」の影響も出てくるので測定が難しく、近接位置での測定が良さそうです。
が、背面開口のバックロードは近接測定だと上手くいかないので、周波数測定時と同じ1mで行っています。
下が、シングルホーンとデュアルホーンの実測値(軸上1m)です。
(↑クリックで拡大)

バックロードの位相は上のような感じになりますが、シングルバックロードは全体的には良い感じになってます。
グラフ読みで、100Hzで正相、57Hzで逆相といったところ。
計算値では94Hzで正相、47Hzで逆相になるはずです。
この位相ズレの誤差は「空気室のバネ効果」の影響があるのかもしれません。(未検証)
これはバスレフ(位相反転形)と似たような動作になっているとも考えられます。
他にも位相に関係した動作があるのかもしれませんが『謎』です。

一方、スタガード・デュアル・バックロードの方は、位相メチャクチャ状態ですね。
これは特性をずらせた2つのホーンが「良い具合に機能してる」のでしょう。なかなか良い傾向です(自己満解釈、、、笑)

位相のアバレが多い

位相ズレの細分化

ピーク、ディップの細分化&変動レベル平均化

周波数特性フラット化

こうなれば『言うこと無し』です(爆死)

いずれにしても『位相ズレ』に関しては余り気にしなくても良いような気もします。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」ってことで(違)

■ショートホーンとロングホーン

特性の違うホーンの数が多いほど特性は平均化されますが、設計製作が難しくなり現実的ではありません。
通常はショートとロングの2ホーンが無難でしょう。
仮にショート1.7m(4λ=50Hz)とロング2.5m(4λ=34Hz)の組み合わせを考えて見ます。

仮に、
50Hzの倍音でピークが出来るとするとピーク周波数は、、、
50、100、150、200、250、300・・・

34Hzの倍音でピークが出来るとするとピーク周波数は、、、

34、68、102、136、170、204、238、272、306・・・

100、200、300Hz付近以外はピークが分散化されてスタガード効果がありそうですが、あくまでも計算上の話です。
『作ってみないと分からない』のが実際のところですが、経験上シングルホーンよりは『クセ』が少なくなります。
いずれにしても計算上のピーク、ディップが出きるだけ重ならないようにすることが『スタガード効果』のキモです。

具体的なホーン長の比は、
『ショート:ロング=素数:1つ上の素数』
くらいが良い感じです。
実際の設計では狙い通りのホーン長にするのは難しいですが、
例えば、、、
『3:5』 『5:7』 『7:11』『11:13』『13:17』といったところを目標にすると良い結果が得られそうです。

仮にショートホーンを170cmとすると、理想的なロングホーンは、
201、222、238、267、283、、、、
こうなるとロング=200cm〜283cmくらいならOKっぽいですね(爆死)

■ホーン開口位置での大まかな傾向

【前面開口タイプ】

ホーン開口から中低域が直接飛び出してくるので鳴りっぷりが良くダイナミック。
が、付帯音やホーンの癖(特定周波数での共鳴音など)も多めに出てくるので吸音材を使うことも有り。
他のタイプに比べ壁の影響は少ないのでセッティングしやすいようです。

【背面開口タイプ】
ホーン鳴きを感じることは少ない傾向。クラシック中心なら迷わず背面開口。
ただ背面の壁の影響(素材、距離等)が大きいので使いこなしに難有り。

【底面開口タイプ】
上手く底面を浮かせることが出来ればオールマイティに使えそうです。
床が鳴きやすいので注意。

【側面開口タイプ】
これもオールマイティ型ですが、、、良くも悪くも標準的で中途半端、発展性は少ないかも?
セッティングで広がりを出しやすいのでサラウンド効果も期待できそうです。

ということで、
コンビネーション型スタガードタイプで開口位置の組み合わせを工夫すれば、好みの音に近づけるかもしれません。

■ホーン比率(スロート面積比)を変えて中低域の音質調整

中央仕切り板を左右に移動させてホーン比率(スロート面積比)を変えることによって、帯域バランスを整えることが出来ます。

スタガード・バックロードホーンの標準設計ではショートホーンとロングホーンのホーン比率(スロート面積比)を50:50にしてますが、ショートホーンの比率を大きくして高域寄りに、ロングホーンの比率を大きくして低域寄りのバランスにすることも可能です。
尚、ホーン比率変更では、スロート総面積を変えずに開口面積を変えられるので帯域バランスをイメージしやすいと思います。


周波数特性的には、こんな感じに変化すると思いますが、実際にはこう上手くはいかないでしょう。
「ホーン比率による特性変化」はシミュレーション出来ないので、カットアンドトライ、作ってみなけりゃ分からない世界です。
が、可能性は無限大なので「工作の好きな方」には美味しいネタかもしれませんね〜(笑)


最終的には、、、
長短ホーンの組み合わせ、開口位置の組み合わせ、ホーン比率の組み合わせを工夫して、、、
『無限大の組み合わせ』が可能になります。
まさに可能性無限大『オンリー・ワン』の世界ですね♪



以上が「スタガード・バックロードホーン」&「シングル・バックロードホーン」の基本になります。




【参考資料】

失敗しない(かもしれない)簡単バックロード設計法

簡単バックロード計算式(2013年版)


組み合わせ(コンビネーション)型スタガード・バックロードホーン図面集

ダンプダクト・バックロードホーン(DD-BH)「設計のツボ」

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